【古代】銅鏡

歴史小話

銅鏡がどんなものなのか、いまいち分からなかった。現在の鏡のようにきちんと姿形を映せる技術が当時あったとは思えないし、何かを映しているのを自分の目で見たこともない。古代の技術だし太陽の光を受けて明るく光る程度のものだろうと思っていた。

しかし『鋳物 ものと人間の文化史182』を読んでみると、それなりにきちんとものを写し出す鏡だったことが分かる。青銅製の鏡は単純に研磨しただけでは研磨直後はよく映っても、時間が経つと銅が酸化してよく見えなくなってしまう。そのため、まずは初めにヤスリで粗研磨をし、次に「せん」という金属の刃物で研磨するらしい。さらに、朴(ほお)の炭で炭研ぎをし、仕上げに砥の粉砥ぎで鏡面に仕上げる。そして最後に梅酢で拭き、水銀に錫を溶かしたペースト状のものを塗布して、銀白色の光沢面に仕上げるのだ。すると、なかなかの出来らしい。

長期間使い続けるとやがては表面が酸化して映りが悪くなるので、再び研磨操作を繰り返さないといけなくなる。そしてこの手入れの工程を繰り返して鏡を使い続けると、鏡は次第に薄くなり、魔鏡ができあがるのだ。

最近は便利なもので、YouTubeで銅鏡を磨いて鏡としてものを映す様子を動画で見ることができる。綺麗に映るものだと感心する。中には、「卑弥呼の鏡」と呼ばれる三角縁神獣鏡を3Dプリンターで復元したなんて動画もある。京大だったか、大学の教授が説明している動画あるが、それを見ると鏡面に太陽光を当て壁に反射させると、裏面の文様を映し出すようになっている。

銅鏡には仏や霊獣などが描かれていて背面が凹凸になっているが、この厚みの不均一が鏡本体にひずみが生じさせて、厚い部分が凹面に薄い部分が凸面になって反射光にムラが出るらしい。

そういう事を知ると、博物館で銅鏡を見ても少しどんなものか分かり展示を楽しめる。一口に銅鏡といってもその種類は多く、それぞれの特徴を押さえることなどできないが、そんな事を知っていれば少しは楽しめるのではないかと思う。

東京では渋谷にある國學院大学博物館と御茶ノ水にある明治大学博物館で銅鏡を見ることができる。

國學院大學博物館にて
明治大学博物館にて
明治大学博物館では銅鏡の鏡面が展示されている。時間の経過でこのように鏡面が劣化していくことが分かるが、なかな銅鏡の鏡面を見れることはないのではないだろうか。

参考文献
中江秀雄『鋳物 ものと人間の文化史182』法政大学出版(2018年)

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