【小話】移動組立式の近世の軍船 入れ子船

『日本史の謎は「地形」で解けるー環境・民族篇』で紹介されていた、『「縮み」志向の日本人』という本を読んでいたら、入れ子船というものを知った。入れ子というのは、同じ形で大きさの少し違うものを重ねて収容することで、現在ではお弁当箱やジップロックのコンテナー容器を想像すると分かりやすいかと思う。

入れ子式の軍船について、本にはこんなことが書かれている。

日本人はむかしから、「広く使って小さく収める」省スペースの知恵として、何でも入れ子仕立てに縮めようとした発想を持っていたのです。十尺の長いサオを入れ子にしてつなげば、一尺の短いサオに縮められ、大きな船もまた、分解、組み立てができるように箱型の入れ子にして小さく畳めば陸地でも容易に携行することができるのです。それが入れ子竿であり、近世の軍船だった入れ子舟(たたみぶね)でありました。

(出典:『「縮み」志向の日本人』李御寧/講談社学術文庫)

「こんなものが安土桃山時代もしくは江戸時代にあったのか、しかも軍船で」と入れ子舟を知った時は驚いたが、調べてみてもいまいち分からない。コトバントという用語検索サイト(ウェブの百科事典)に絵があるので、どんなものかを知ることができるが、実際どのように使われていたのかは不明である。もう一つ、広辞苑無料検索というサイトにも入れ子船について文章でのみ説明が書かれているが、それ以外は検索にヒットしない。画像もコトバンクのもの以外は見つけることができない。

個人的には興味があるのだが、残念ながら現時点では知る由がない。

軍船ということだが、補給に使われたのだろう。合戦で使うには耐久性が頼りなく、大型船に体当たりされたらすぐに沈んでしまうだろう。どのような用途に使われたのかは分からないが、近世の書物や絵巻に描かれていることがあるかもしれないから、今後見つける機会があればまた紹介したいと思う。

コンパクトに収納して組み立てる技術を、昔に遡ってみてみるのも面白そうである。戦国時代なら城攻めの際に組み立て式の櫓や門を破壊する車が使われることがあったようだが、軍事以外でもそういったものがあったのだろう。城や寺院、橋などの建築に使う道具(今で言うところの高層ビルに使うクレーンのようなもの)や建物や大木、大きな石など、物の運搬にも組立式の道具が使われたのだろう。当時のそうした技術が現在の技術の基になっているものも沢山あるだろし、それが分かれば普段の生活も楽しくなるような気がする。

Bitly

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