中公文庫『日本の歴史13 江戸開府』辻達也

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本の概略
織田信長の死後、豊臣秀吉に律義に従い諸大名と秀吉との斡旋に努めながらも、自身の政治的・経済的基盤を確立し、秀吉の亡き後は豊臣家を滅ぼし、江戸幕府の長期政権構想を築き上げた徳川家康について書かれた本。

家康、秀忠、家光三代が50年かけて徳川幕府による全国支配の体制を固めあげたことが本の主題になっており、徳川三百年の太平の基礎を築いてゆく過程が書かれている。

徳川幕府の話が中心だから、庶民の話や海外との関係は別の巻になる。庶民の話は15巻の大名と百姓に、海外との関係は14巻の鎖国に書かれている。本によると、3冊を通じて近世の社会体制の確立が書かれていることになり、江戸幕府がどのような目的を持ち大名や百姓を統治しようとしたか広く知るには、3冊読む必要があるということになる。

家康の天下統一は軍事によるものというよりかは、政治的勝利によるものが大きいのだが、家康が政治的にどのように勝利して政権を取るに至ったのか、その過程が全体の約3分の1書かれている。

そしてもう3分の1は幕府の建設と豊臣家の攻略が、残る3分の1は大名、朝廷、寺社の統制をして体制を確立してく過程が書かれている。

江戸開府後は、家康は多彩な人材を登用したが、本には外様大名だけでなく、幕府に従事した個性的な人材が多く紹介されている。本多正信・正純親子や大久保忠隣、大久保長安や伊奈忠次、ウィリアム・アダムス、林羅山、天海、茶屋四郎次郎と、歴史の教科書にも出てくる人物についても書かれている。また、秀忠以外の家康の息子や、秀忠・家光の重臣の酒井忠勝や土井利勝といった人物についても書かれている。

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読んだきっかけ
電車日本一周の「旅の拾いもの」では、旅の2日目で名古屋城のことを書いた。名古屋城は外様大名の使役によって造られたのだが、その規模は大きい。築城には連日20万人が従事したともいわれ、「清州越し」と呼ばれる武家や商家、寺院の大規模な引っ越しが行われている。多くの大名が経済的な負担を強いられながら築城した城なのだが、具体的にどういったことが各大名家に割り振られたのか知りたいと思った。ちょうと旅の1日目で、同じように大名普請で改修された駿府城について書いたこともあり、家康が外様大名に課した「天下普請」という使役について、もう少し詳しく知りたいと思った。

同時にこの天下普請には、疑問もあった。中学や高校の日本史の授業では、家康の天下普請は外様大名が反乱しないように、経済力を削ぐために負担をかけたと教わった。参勤交代と同じように、大名を締め付けた政策だと学んだが、年をとり、江戸時代が暗黒時代だったという考えは薩長史観によるもということを知ってから、天下普請は必ずしも外様大名を圧迫させるものとは限らないのではないかという疑問もあった。

日本を統治するのに大名を限界まで圧迫させる必要があるのかと思うし、そういう押さえつけ・締めつけをしたらどうなるのかは、歴史で先例がありその危険性を知っていたはずだと思える。また、この時代にはポルトガルとの貿易が既に行われており、貿易の背後にはイエズス会による日本の植民地化の危険性も知られていた。海外からの侵略にも備えなくてはいけない時期に、国内の各地を疲弊させる必要があったのかとも思える。そんな疑問も解消されればと思い、本を読むことにした。

日本史の本は沢山あるがそんな数ある中でも中公文庫の日本の歴史を選んだのは、通史として評判が良かったからだ。今から40年以上も前に出版されていて内容が古くなっているものがあるのにもかかわらず、いまだに一読しておいた方がいい本として評判がいい。試しに中世を扱った本を数冊読んでみたら、教科書よりも断然詳しくかなり読み応えがある。1冊500ページとボリュームがあり、読むのが大変で、歴史をあまり知らない自分の頭では一読しただけでは内容を押さえることができないし、書かれていることが正しいことなのかの判断もつかないが、いろいろなことを知ることができた。

「旅の拾いもの」の4日目・5日目で中世のことを調べていた時に、一般的な日本史の知識の少なさを痛感した。自分が知りたいことは庶民の暮らしや風習・文化だが、それを知るには学校で教わるような、為政者による歴史・政治としての歴史を少なからず知っておく必要がある。そういった理由で、一度日本史の通史を一通り読むことにした。

読んでよかった点
まず知りたかったことが知れた。大名の普請では、外様大名はどのようなことをしたのか知ることができた。名古屋城についてはほとんど書かれていなかったが、代わりに江戸城について知ることができた。江戸城の築城では、有力な外様大名28家に対して、まずは大きな船を3,000艇造らせた。この船で伊豆まで行き、巨石を船に積み込み江戸まで運び、石垣の補修をしたのだ。各地から木材を運び、城の壁に塗る漆喰の原料となる石灰は、現在の青梅市にあたる村で焼いて作られた。諸大名は江戸で城の改修にあたるだけでなく、その材料の運搬にも従事し、更に運搬させる道具(船や牛・馬、荷車など)も自身で賄わなければならなかったことが分かる。

城ができると今度は埋め立て工事をする。現在の駿河台からお茶の水にかけての丘陵を崩し、その土で洲を埋めた。主要な譜代大名70家が13に分かれ工区を受け持ち、日本橋や銀座といった東京の最も繁華な地帯が埋め立てられて町となった。この時の工区を受け持った大名家の名前は、尾張町・加賀町・出雲町として残っている。趣味の散策にも関連することが少なからず知ることができた。

こうしてみると、外様大名への天下普請がかなり重かったことが理解できる。天下普請が行われたのは江戸城だけでなく、彦根城、駿府城、名古屋城と立て続けに行われている。学校の教科書の内容通り諸大名の経済的負担は大きく、諸大名は幕府や豪商から借金をしている。各大名は自分の領地から農民を徴発して江戸に連れてきただけでなく、資材の運搬に使う道具や改修に使う道具も用意しなければならなかった。

しかし、これは悪質なものではない。著者によると「所領・俸禄を給付される御恩に対して負担すべき義務」であり、軍役の一部であって税と捉えることができる。

一部抜粋すると、このように書かれている。

江戸時代に対する一般の人々の観念には、幕府と諸大名との間に、敵視・緊張が永続的であったという見方が強いようだ。例えば参勤交代や城普請などの土木工事の課役が、大名の財力を弱らせる目的からおこなわれたなどという見かたがそれである。

たしかに近世初期や幕末には部分的に緊張した関係も認められるが、だいたい江戸時代を通じてそういうことはない。参勤交代や土木工事負担などは、諸大名が所領を与えられて恩恵に対する奉公としておこなうもので、戦争に動員されるのと同じ意味をもっている。けっして策略として課せられて負担ではなく、江戸時代の社会の原則にもとづくものである。

幕府が中央政権として全国を統治してゆくについて、諸大名が地方政権として安定しているということは望ましいことなのであって、やたらに諸大名の財政を窮乏させ、社会を不安定にすることを意図するものではなかった。諸大名としても、幕府の支配体制の中に組みこまれて、体制の一部を構成して安定した地位を保っているのであるから、あえて幕府を敵視し、みずから秩序の外にとび出すようなことは考えもしなかったのである。

出典:『日本の歴史13 江戸開府』辻達也/中公文庫

著者の立場としては、諸大名を潰すための政策でなかったことになる。個人的には、泰平の世になり溢れ出した武士を活用するために江戸城改修が行われたという説についても知りたかったが、触れられていないということは、的違いなのかもしれない。そもそも兵農分離などなかったともいわれているし。

ある意味では教科書的というのか、中立的に書かれているという印象を受ける。幕府寄りの立場で書いているともいえるが、通説に対する反論が書かれていることはいいと思う。

家康から秀忠、家光と時代が流れていくなかで、幕府の体制がガチガチになっていく過程も読んでいて面白かった。幕府の制度や方針を外様大名、豊臣家、朝廷、寺社、商人へと外部に強要していくうちに、幕府自体の組織も自然と固めあげられていくようになる。家康の頃は個性的な重臣が個々の能力を遺憾なく発揮して様々な体制づくりをしたが、それが段々、組織化した家臣の集まりになっていく。身内の取り潰しも厳しくなり、幕府の意から反れた者を容赦なく潰すようになり、幕府自体が、そして将軍自身も、長期政権に相応しい型にはめられていくようになる。

他に面白かったところでは、小牧長久手の戦いや江戸転封の話もよかった。小牧長久手の戦いでは、家康は初めから秀吉に勝つつもりはなく、恭順した後の自分が一番得をする状況を得るための落としどころを掴む意図があった。一般的にいわれているような、秀吉が信雄を圧迫したのが原因だというのは逆らしく、家康が信雄と秀吉を切り離したことが原因らしいのだ。秀吉は信雄を味方に留めておきたかったが、家康が信雄をそそのかして大義名分の下に戦争を起こし、戦後はより有利な状況で秀吉の傘下につくことを想定していたのではないかとある。

また、江戸転封では、この国替えは家康にとって都合がよかったとある。江戸への移動がなければ、家臣と土地という旧来の束縛から逃れられなかっただろう、とある。関東に移ったことで、破ることが困難な古い伝統を壊し、まったく新しい構想で領国を経営することができたとある。

大分長くなってしまったので省くが、その他、治水に関することや商人にとった政策、鉱山経営なども、本書の主題とは異なるが、それなりに興味がもてる内容で読んでいて面白かった。

今一つだった点
読み応えがあり、特に不満だった点はないが、寺社統制と参勤交代についてもっと知りたかった。どうやら時代が先のようで、詳しいことは他の巻になるのかもしれないが、この巻で知ることができなかった。寺社統制では、檀家制度や寺請制度について知りたかった。14巻の鎖国に書かれているのかと思いきや、そっちでも触れていない。参勤交代についても、家光の時代に法として制定されたが、大勢を率いてはならないと書かれただけであり、その内容についての記述は後の時代になるのかもしれない。

そして、もう一点。シリーズ通してだが、電子書籍がないのは残念。

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