【旅の拾いもの】大和郡山の金魚の歴史

奈良県

夏の季語となっている金魚。子供の頃に盆踊りの縁日でよく目にしましたが、大人になってからはすっかり見る機会がなくなりました。元々金魚は縁日でしか見る機会がなかったのですが、その縁日もコロナ禍で中止が相次ぎ、普段生活しているなかで金魚を見ることはまずなくなりました。

そんな普段の生活に馴染みのない金魚に、どのような歴史があるのか、これまで考えたこともありませんでしたが、奈良を旅した時に金魚に触れる機会がありました。金魚を知ってみると意外なことや気になることが多く、興味深いものがありました。

今回は奈良の郡山を旅して知った金魚の歴史を紹介したいと思います。

奈良県の北部にある大和郡山市は、日本一の金魚の産地として知られており、毎年4月には金魚の品評会が行われ、8月には全国金魚すくいが開催されます。近鉄郡山駅の近くにある柳町商店街には、金魚ストリートという通りがあり、街路灯や車止め、マンホールなど、様々なものが金魚をモチーフにしていて、歩くと郡山が金魚の街であることを知らせてくれます。
 
その金魚ストリートの近くには、箱本館「紺屋」という観光案内所があります。中に入ると金魚の水槽と金魚の歴史を説明したパネルがあり、金魚がどのような経緯で郡山で養殖されるようになったのか知ることができます。

日本の金魚は中国からもたらされたもので、その起源は3~5世紀に遡ります。晋朝梁武帝の時代に、野生の赤い鮒(ふな)が発見されたのが金魚の祖先とされています。昔の中国では、黄金色や真紅色の鮒を見つけると神秘の意味があるとして、食べずに保護して鑑賞したそうです。

10世紀には金魚の飼育が盛んになり、養殖でいろいろな品種が人為的に作り出され、以来中国では金魚を飼育・鑑賞することが高度な趣味として文人の間でもてはやされ、12~13世紀には金魚の愛好家が増えました。

まだガラスのない当時は、金魚を陶製の鉢や壺に入れて飼っていました。瓶に入れて飼育・鑑賞するようになるのは明治時代末期となってからです(江戸時代、裕福な豪商の中には外国製のガラスに金魚を入れて鑑賞した記録がありますが、旅の時に知った内容とは違うので、あえてこのように書いています)。

中国では目が独特のものが好まれ、瓶に蓋をして一点のみ光が差し込むようにして、その中で何代にもわたり金魚を飼い、背中に目がある金魚を作ったなんて衝撃的なパネルがありました。何代にも渡り暗闇に近い所で飼われた金魚は、光を求めて目が背中に移動しのだそうですが、これは『闇の金魚』という小説の一場面でフィクションと考えられます。

金魚がいつ頃日本にもたらさせたのかは諸説ありますが、16世紀の室町時代に、御朱印船による対明貿易が盛んだった堺に金魚がもたらされたのが定説となっています。

江戸時代の享保9年(1724年)、柳澤藩が甲州から郡山城に移封された際に、家臣の中に金魚の飼育に長じた者がおり、以来藩士の間で趣味としての飼育が流行したと伝えられています。

幕末になると、藩が財政難で窮乏するなか、金魚の養殖が藩士の内職として広まり、また明治維新後に失業した武士の一部が領内の農民と提携して金魚の養殖を生業とし、生活の一助としました。最後の大和郡山藩主だった柳澤保申侯の惜しみない援助が大きかったといいます。

その後、金魚が大量に生産されるようになり、地域産業として発展し、郡山金魚が大量に生産されるようになり、日本一を誇るに至りました。

郡山は水質、水利に恵まれた農業用溜池が数多くあり、溜池に発生するミジンコなどの浮遊生物が金魚の稚魚の餌に適していたなどの金魚の養殖に有利な条件が備わっていました。

現在郡山では20数品種の金魚が生産されており、代表的な銘柄に、和金・琉金・出目金・コメット・朱文金・オランダ獅子頭・ランチュウ・丹頂があります。生産量は全国生産の60%を占め、国内はもちろん、遠く諸外国、特にアメリカ、オーストラリア、カナダ、その他ヨーロッパ各国へ輸出されています。

金魚が日本にもたらされた当初、金魚は貴族や富豪のあいだで珍奇な愛玩物として飼われ、庶民の間で流行するようになったのは明治年間になってからのようです。

大和郡山の金魚養殖は、約300年の歴史があり、現在は年間約5,500万尾を出荷し、愛知県弥富市と熊本県長洲町などとともに、日本有数の金魚の生産地として知られています(郡山市ホームページより)。

何気なく立ち寄った箱本館「紺屋」では、水槽に泳ぐ金魚と、金魚についての解説を目にすることができます。無料なので近くを立ち寄った際は中に入るのがおすすめです。

解説の写真はこちらに載せています。

【日本一周補完の旅】3日目②金魚のまち大和郡山 | 綴る旅 (tsuzuritabi.com)

HP:箱本館「紺屋」トップページ (hakomoto.com)

箱本館「紺屋」
開館時間:9:00~17:00
休館日:基本月曜。月によって他の日も休館。
入館料:無料

時間がなくて断念しましたが、金魚の資料館が近鉄郡山駅から徒歩10分くらいの場所にあります。

HP:金魚のふるさと 郡山金魚資料館 やまと錦魚園 (kingyoen.com)

金魚のふる里郡山金魚資料館
開館時間:10時~17時 
定休日:月曜
入館料:無料

参考サイト
箱本館「紺屋」の展示の他に、以下のホームページを参考にさせていただきました。

郡山市ホームページ:ホーム/大和郡山市 (yamatokoriyama.lg.jp)

ホーム>組織から探す>農業水産課>金魚>金魚について>金魚の歴史

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大和郡山を散策した時の記録↓

【日本一周補完の旅】3日目②金魚のまち大和郡山 | 綴る旅 (tsuzuritabi.com)

旅の後に金魚に関する本を読んで知ったことを書いた記事↓

【小話】金魚 | 見知らぬ暮らしの一齣を (tabitsuzuri.com)

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