京都屈指の観光地である嵯峨嵐山の寺院の中でも、特に有名な寺が、世界遺産に登録されている天龍寺だろう。嵐山の人気観光スポットである竹林の小径の横にあるのもあり、季節を問わず多くの観光客が訪れる寺院である。
その天龍寺の見どころは曹源池(そうげんち)の日本庭園だ。鎌倉末期から室町前期に名を馳せた夢窓疎石が造ったこの庭園は、日本で最初に史跡・特別名勝に指定された場所としても知られている。
室町時代創建の天龍寺は、応仁の乱や禁門の変に巻き込まれ、8回もの火災に遭いっているため、古い建物が残されていまない。しかし曹源池の庭園は約700年前の、夢窓疎石が作庭した当時の面影をとどめており、歴史を感じさせる。
説明板には次のようなことが書かれている。
左手に嵐山、正面に亀山・小倉山、右手に愛宕山を借景にした池泉回遊式庭園で、
優美な王朝文化の大和絵風の伝統文化と、
宋元画風の禅文化とが巧みに融け合った庭で、
正面の三段の石組は龍門の瀧と云い、中国の故事に由来し、
手前の石橋は日本最古の橋石組で、右の石組は釈迦三尊石と称し、
釈迦如来(中央)・文殊菩薩(左側)・普賢菩薩(手前下側)を表現していて、
平成6年にユネスコより世界文化遺産に登録された。
滝の足下の三連の石橋は仏教・儒教・道教の三教を表している、なんてことも読んだ本には書かれていたが、注目すべきは龍門の瀧だろう。
龍門の瀧は龍門瀑ともいわれ、中国の黄河の三段の滝になった急流を登り切った鯉が龍になるという、日本では登龍門で知られる故事を表している。
禅宗では登龍門は解脱を意味し、この庭は悟りを開くことを目的としている。
現在でも雲水が、観光客がいなくなった夜に坐禅を組み、庭を眺め、修行するという。
各地にある禅寺の枯山水の庭園も、本来、悟りを開くという、修行目的のために設けられているのだろう。
枯山水庭園は夢窓疎石がつくったものと言われている。多くの観光客に混ざり庭園を眺めるとそんなことを忘れてしまうが、こうしたことを頭の片隅に置きながら参拝すると、より楽しめると思う。
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