平安時代を理解するうえで役に立ったと思う本を数冊紹介したいと思う。一口に平安時代といっても、400年の幅がある。一応の区分として平安京遷都から鎌倉幕府設立までの約400年を平安時代とされているが、400年の間には蝦夷征討、荘園整理令、平将門・藤原純友の乱、摂関政治、院政、保元・平治の乱、平家政権の誕生と、様々なことが起きている。
中公文庫の日本の歴史を読んでも、基礎知識の足りない自分にとっては難しく、他の出版社から出ている通史を手に取ってみたが、その方がさらに難しく、まだまだ理解できていない。今後の理解のために、メモとして「小話」で武士の起源や荘園について書いているが、半分も合っていないのではないかと思う。それほど難しい。
いろいろと本を手に取ってみたが、素人でも気軽読めるような本にはなかなか出合えず、現時点では中公文庫の日本の歴史がまだ分かりやすくおすすめなのかと思う。読めやすい本をやおすすめの本を見つけたら、随時更新したいと思う。
『日本の歴史4 平安京』北山茂夫
光仁天皇即位から村上天皇崩御まで(770年~966年)の平安時代前期を扱っている。701年に制定された大宝律令が既に崩れ、寄進地系荘園の増加によるえ朝廷の財政が悪化が進行していくなか、天皇・摂政が真剣に地方行政を引き締めようとした一方で、地方を軽視した政策をした者がいた。
都では年貢の未納や質の悪化が起こり税収が減り、洪水、疫病、治安悪化により荒廃し、地方では群盗が発生し、郡司らによって国司が襲撃され、将門・純友の乱が起こる。個人的には基礎知識が不足していたため難解だったが、桓武・嵯峨・清和の政策や摂関家の台頭が詳しく書かれているため、読みごたえがある1冊だと思う(レビューはこちら)。
『日本の歴史5 王朝の貴族』土田直鎮
村上天皇が崩御してから前九年の役が起こる辺りまで(967年~1052年)の平安中期を扱っている。藤原道長が他紙排斥後に身内のライバルに勝ち頂点に立つまでの過程と、刀伊の入寇に対応する朝廷が政治史はメインとなっている。
本の半分くらいは文化・風習に触れているため、平安時代を詳しく知ることができる。読みやすく分かりやすい文章で書かれていて、基礎知識がなくても読み進めることができる。貴族の生活や仕事、儀式の意味、怨霊や浄土教への信仰があった訳など、当時の貴族の考えや価値観を知ることができる。平安時代を知る上でおすすめの一冊(レビューはこちら)。
『日本の歴史6 武士の登場』竹内理三
平忠常の乱から壇ノ浦の戦いで平氏が滅亡するまで(1028年~1184年)の平安時代後期を扱った本。本の中で説明されている武士の発生については、近年修正を迫られているとはいえ、平安時代の政策や武士の役職などの説明は分かりやすく読む価値はある。
東国の安倍氏や藤原三代、源義家や平清盛について知れるし、院政や平家政権の構造も知ることができる。荘園の説明も深く、土地と住民を別々に支配する二元的支配についてかかれていたりして、興味深いことがいろいろと書かれている内容となっている(レビューはこちら)。
『律令国家の転換と「日本」』坂上康俊
講談社学術文庫から出ている日本の歴史(通史)の本。中公文庫の『平安京』には書かれていないことが知れるので、副読本として読むのにおすすめ。平安初期から中期にどのように国家財政が減少していくのか分かりやすく書かれていて、それによって税制が変化し(律令制が転換し)、国司や郡司が変化していく様子を知ることができる。対外関係から国政がどのように変化したのか述べていて、天皇の性格が変化し宮廷の儀式が変わっていく様子や、九州の隼人と東北の蝦夷への対応が変化していくことが解説されている。
簡潔に書かれている分、分かりやすい反面、知識のないことは理解できず、『平安京』よりも難解だが、より新しい学説に沿って別の視点で平安時代を捉えているので、一読の価値がある。3分の1しか理解できなかったが、基礎知識のある人にはおすすめ(レビューはこちら)。
楽天はこちら:律令国家の転換と「日本」 日本の歴史05 (講談社学術文庫) [ 坂上 康俊 ]『殴り合う貴族たち』繁田信一
全編にわたり貴族(上流貴族)がいかに暴力的で凶暴だったのか書いている本。貴族と武士が別物ではないということが分かる一冊。儀式中に取っ組み合いの喧嘩し、気に入らない者がいたら拉致して暴行し、報復に家を壊し金目の物を取り上げる。書くにはばかるような暴行や殺人も書かれている。腕力のある下人を従え凶暴だった貴族の性格を見ると、武士がどのように発生していくのかが分かるし、地方でどれだけ百姓を抑圧していたのか、容易に理解できる。
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武士がどのように発生したのか説明した本。武士の発生を時代を遡って説明しているので、平安時代がどのような時代だったのか総合的に理解することができる。出桓武朝以降、出された政策がどのような事態を招き、またその背景にはどのようなことがあったのか、分かりやすく解説しているため平安時代を知りたい人にもおすすめの一冊。地方では国司よりも院宮王臣家の方が断然強く、百姓を収奪し荘園を増やし武力を付けていく様子がよく分かる。
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