【小話】鉄道により普及した初詣

歴史小話

毎年多くの参拝客で賑わう初詣は、明治時代に鉄道が開通してから人々に広まった。江戸時代までは初詣というものはなく、新年の初めの月の縁日に、各々が信仰する寺社に参拝していた。

恵方詣という、その年の歳神様がいるとされる方角に位置する寺社に参拝する習慣もあった。

江戸時代までは初縁日と恵方詣が元旦詣であった。

それが鉄道が開通すると変化する。明治5年5月に品川〜横浜間の鉄道が開通し、翌6月に途中に川崎停車場が設けられると、川崎大師に参拝する人が徐々に増加するようになった。

汽車に乗れて、手軽に郊外散策を楽しめるのが人気の理由だったという。

鉄道での通勤・通学が定着していなかった当時、汽車は特定のハレの日に乗れるものであった。それまでの徒歩の参拝や行楽となると女性や子供が気軽にできるものではなかったが、汽車なら家族・親戚で楽しめる。そこが人気が出た理由である。

行楽の要素が強いため、行きと帰りのルートを別にして初詣を楽しむ人が多かったようだ。

鉄道の開通により参拝客が増えた川崎大師に対し、成田山は当初から参拝客の輸送を目的として成田鉄道が建設された(明治27年、34年)。

鉄道会社にとって冬季は春・秋の行楽シーズンと比べて乗客が減る閑散期だった。初詣と節分はこの冬季の減収を補う絶好のものであり、鉄道会社の大々的な宣伝により人々に認知され、普及した。

大正時代に創建された明治神宮(年間参拝客一位)を除き、三が日の初詣で圧倒的な人気を誇る成田山新勝寺(二位)と川崎大師(三位)は鉄道によって人気の初詣先となった。四位の伏見稲荷大社もそうである。

現在参拝客で賑わう寺社は、寺社が宣伝したのではなく鉄道会社が大々的に喧伝し人気が出たものである。予想以上の参拝客に手を焼き、新年早々くたくたになり、正月を嘆いたお坊さんや神主さんが少なくなかった、なんて話もある。

参考文献

平山昇『鉄道が変えた社寺参詣』交通新聞社新書(2012年)

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島田/裕巳『神も仏も大好きな日本人』ちくま新書(2011年)

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