中公文庫『日本の歴史1 神話から歴史へ』を読んで、木は水の中では腐らないことを知った。水に浸かった木材は腐ることがないため、池の底にある遺跡から木製の農具が発掘されたりするのだ。
海水でも腐らないのかと思い調べてみると、海水でも木は腐らない。木材が腐るのは、水分が木材の細胞組織を壊すからではなく、白蟻や菌の繁殖によって細胞組織が食べられ、組織が崩壊していくからなのだそうだ。
菌はある程度、空気と湿気がある環境を好むため、空気が十分でない水の中では菌が繁殖せず、木が朽ちることがないという。ネットで調べてみると、木材を扱っている業者や建築関係の会社のサイトやブログにそのようなことが紹介されているのだが、その例として昔は海に丸太を浮かべていたことも書かれている。
そういえばそんな光景を、自分の目だったのかテレビなどの映像だったのか定かではないが、確かに見た記憶がある。
面白いのが、丸太を海に浮かべているのは保管のためだけでなく、うまく乾燥させるためにもそうしているところだ。
伐採した直後の木は含水率が高く、そのまま使うと反ったり割れたりしてしまい建材としては使えないらしい。そのため木材を乾燥させてから使わなければならないのだが、丸太のまま乾燥させるとヒビ割れが生じてしまう。
これは木の中には中心部分の赤い色をした「赤身(心材)」と呼ばれる部分と、外周部の白い色をした「白太(辺材)」と呼ばれる部分があり、それぞれ収縮率が違うため、乾燥させるとヒビができてしまうからなのだ。
そこで、丸太を水につけておくと、赤身と白太の乾燥の差が小さくなり、ヒビ割れがしなくなるという。なんでも、木の中の樹脂が液体から粒になるため、乾燥させると水分が出やすくなるのだとか。
また、水中での菌の作用で木の細胞が壊れ、乾燥時に水分が出やすくなるからだともいわれている。ちなみに、欅(ケヤキ)や檜(ヒノキ)は5年ほど水中につけておくと、白太部分が腐って赤身だけ残るのだそうだ。
そんな訳で、水中に浸けておいた木材は、水に浸けていない木材よりも早く乾くそうだ。木と水の関係を考えてみると、面白い。
宮島にある厳島神社の鳥居も、同じような理由で腐らないらしい。世の中腐らないものはない訳で、厳密には永久に存在し続けるはずはないのだが、100年は風雨に耐えることができるのだ。
厳島神社のように水の中に立つ鳥居は日本の各地にある。
朝日と鳥居が重なる光景が美しい茨城県の大洗磯前神社の神磯の鳥居、富士山をバックに芦ノ湖に立つ箱根神社、透明感のある琵琶湖に立つ白髭神社、福岡県の二見ヶ浦に浮かぶ白い鳥居の櫻井神社の鳥居、有明海に浮かぶ3基の赤い鳥居で知られる佐賀県の大魚神社と、一度は訪れてみたい魅力的な鳥居が日本にはある。
旅で見る機会があれば、そんなことを思いながら見てみると、また一味違う楽しみ方ができるのではないだろうか。波や風を受けても倒れない建築技術もさることながら、鳥居が水や潮にさらされ続けても腐らない木の不思議さも、自然の素晴らしさというのだろうか、また凄いものだと思う。
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