奈良時代について知りたいと思い、何冊か本を読んでみたら、思いのほか面白い本がありました。
奈良時代は自分の中ではマイナーな時代で、全くと言っていいほど興味がありませんでしたが、読んだ本のおかげで、その独特な時代感に引き寄せられ、興味の尽きない面白い時代だと思うようになりました。
今回は個人的におすすめだと思う、奈良時代を扱った本を紹介したいと思います。
『日本の歴史3 奈良の都』青木和夫
日本史の通史といえば、中公文庫の日本の歴史が出版当時から未だに根強く支持されていますが、3巻の『奈良の都』も評価の高い作品だと思います。
出版されたのは50年近く前(1973年初版発行)で、木簡の記述もありませんが、それでも奈良時代のことを深く広く説明していて、とても勉強になります。
律令や政治的なことだけでなく、平城京に暮らす貴族や下級官人の暮らし、都での課役、地方の村人の暮らし、文化や宗教といった、気軽に読めることがたくさん書かれています。
当時の貴族が実務に長け現場の最前線で活躍し、また農業に精通した土臭さのある存在だったという描写は、自分の貴族像とのギャップを大きく感じさせるもので、非常に興味深いものがありました。
強大で先進的な大国・唐に追いつくために律令を制定し、それを全国隈なく施行しようとがむしゃらに突き進んでいく熱い貴族(国司)の姿には、後の時代の私腹を肥やす国司とは全く違った姿があり、非常に興味深い時代だと気づかせてくれました。
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『若い人に語る奈良時代の歴史』寺崎保広
学生や市民への講義形式で書かれているので読みやすく、そして分かりやすい本です。
天皇、平城京で暮らす官人、律令国家、正倉院、木簡、古代の外交についての詳細な説明がされています。
著者は律令制開始間もない頃の奈良時代を「詳細な律令の規定を生真面目に実施にうつそうとした特異な時代」と書いていて、奈良時代がその前後の時代と比べてどのような「特異」性があったのか、いろいろな面から知ることができます。
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『地方官人たちの古代史』中村順昭
奈良時代の郡司に焦点を当てた本で、奈良時代の歴史を天皇や貴族の動向を中心に見るのではなく、地方社会から眺めてみようと意図して書かれています。
様々な形で大和政権に服属していた地方豪族が、中央から派遣されてくる国司の支配下に郡司として置かれることで、彼らがどのように変化していったのか知ることができます。
郡司の割の合わない仕事量や同族同士で役職を押し付けあう様子や、逆に郡司になりたいがために倉を焼いて失脚させようとする様子を知ることができ、結構面白く読めました。
専門的で難しく感じる本でしたが、内容が充実しているので読みごたえがあります。
『平城京を歩く』森郁夫・甲斐弓子
律令国家を支えた平城京で働く中級官人や下級官人(非正規で働く)の生活が詳しく書かれている本です。
住んでいる家や通勤、職場での待遇など、貴族ではない名もなき官人の生活感が知れて面白かったです。
土馬といった疫病退散の呪い(まじない)や胞衣壺(えなつぼ)という子供が健康に育つための呪いについても書かれていて、風習を知ることもできます。写真が豊富でビジュアルでも楽しめるので機会があれば一読をおすすめします。
『国銅 上・下』帚木蓬生
こちらは小説です。
奈良の大仏を造るために各地から集めれた役夫たちの暮らしを通して、課役の過酷さや生きることの困難さを知ることができました。
危険な課役だけでなく、貴族や国司の暮らし、僧の生活、平城京の市場や治安、物流、そして銅の精製や大仏の造営などの技術的なこと、更には病気や薬草などの医学的なことと、奈良時代のことを幅広く知ることができます。
歴史の解説をしている本よりも小説の方が好きな人には、奈良時代のことを知れる本としておすすです。
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『天平の甍』井上靖
こちらも小説です。おまけです…。
遣唐使に乗って唐に渡り鑑真を連れてきた僧の話が書かれています。
奈良時代を扱った小説ですが、物語の舞台は主に唐になります。
仏法や僧の生活、寺院の様子など、仏教に関すること以外はあまり書かれていませんが、唐の様子や遣唐使の悲惨さを知ることができます。
日本よりも遥かに強大な大国だった唐のことを知れ、また、その唐に命を懸けて学びに行った留学僧の生きざまを読むことができます。
日本の仏教界のことも多少描かれています。
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若い人に語る奈良時代の歴史 [ 寺崎保広 ] 地方官人たちの古代史 律令国家を支えた人びと (歴史文化ライブラリー) [ 中村順昭 ] 国銅 上 (新潮文庫 新潮文庫) [ 帚木 蓬生 ] 国銅 下 (新潮文庫 新潮文庫) [ 帚木 蓬生 ] 天平の甍 (新潮文庫 いー7-11 新潮文庫) [ 井上 靖 ]
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