法隆寺の拝観料は日本一高いのではないか。
2022年に旅をするまではそう思っていた。
2023年時点での法隆寺の拝観料は1,500円で、これは東大寺や興福寺などの奈良の世界遺産よりも高いし、平等院鳳凰堂や清水寺などの京都の世界遺産よりも高い。
京都の世界遺産の西芳寺(書経とセットで3,000円の拝観料)のように、あえて参拝者の数を制限している場所なら分かるが、寺院の修繕費のためにも参拝客を増やしたいはずの寺院にとって、この拝観料は逆に入場を規制しているかのように思える高さである。
こう言ってはなんだが、世界遺産という知名度に胡座をかいているのではないだろうかと、そう考えざるを得ない気持ちにさせる値段である。ちなみに、薬師寺も期間によっては共通券が1,600円とかなり高い。
そんな批判的な考えを法隆寺に持っていたが、2022年に参拝した時に、数時間ではとても境内を鑑賞するのに足りないことを痛感した。さらに、旅を終えてからブログや動画を作る際にネットや本で気になることを調べると、新たに法隆寺の見どころを知ることがあり、きちんと鑑賞するには1日、少なくとも半日はかけるべきだと思うようになった。
1日かけて観るほどの見どころがあるなら、1,500円という拝観料は決して高くはない。そう考えを改めた。
法隆寺では拝観料を納めると、西院伽藍・東院伽藍・大宝蔵院の3箇所を観ることができる。西院伽藍は有名な五重塔やエンタシスの回廊がある場所で、東院伽藍は八角形の夢殿がある場所だ。大宝蔵院は宝物館で、高校の日本史の資料集で一度は目にする有名な仏像や宝物を鑑賞することができる(法隆寺の詳しい見どころは、こちらの記事をどうぞ)。
西院伽藍の五重塔と金堂は、樹齢千年の檜が使われていて、約1,300年以上も地震や台風、雷などの自然災害に耐え、今もなお飛鳥時代の建築様式を伝えている。
夢殿は、お釈迦様が一生のうちに経過した八種の相(兜率・入胎・出胎・出家・降魔・成道・転法輪・入滅)を表すために八角形の形をしており、高い技術を駆使して屋根を抑えている。
大宝蔵院は、仏像であれば木像・銅像・塑像・乾漆像・石造と全ての種類が揃っていて、飛鳥時代から近代に至るまでの様々な時代の仏像を観ることができる。解説も簡潔で分かりやすい。
有料ゾーン以外にも見どころが多く、室町時代に造られた南門とその前にある鯛石、境内に美しく続く筑地塀、我が国最古の仁王像が立つ中門も見ごたえがある。
西院伽藍の近くには鎌倉時代に造られた五聖霊院、飛鳥時代の遺構の東室・妻室、平安時代の遺構、綱封蔵がある。
さらには離れた夢殿までの通りには、奈良時代に造られた三棟造りの奈良時代を代表する東大門が建ち、桃山時代から江戸時代に造られた築地塀が続く。粘土を棒で一層ずつ何層にも突き固めて造っていて、風雨にさらされ劣化しているさまが風情を感じられる。
境内の外になるが、参道の入り口には無料の観光案内所の法隆寺iセンターがある。飛鳥時代、法隆寺をどのように造ったのか知ることができ、また改修の際に使った道具が展示されている。
拝観料が1,500円する寺院はなかなかないが、同時に1日かけて観るほどの見どころがある寺院も、そう多くはないのではないだろうか。
実際、遠くから訪れる際は、他の名所にも行くため予定を詰めてしまいがちだが、できる限りゆっくり参拝するのがお勧めである。そして短い滞在時間でもより充実した参拝になるよう、事前にしっかり見どころを予習しておくことをお勧めしたい。
コメント