【旅の拾いもの】野尻湖旅行がきっかけで知った信濃町の特産品

長野県

2012年の夏に長野県の野尻湖に旅行に行った。野尻湖と聞いて、ナウマンゾウの化石が発見された場所と思い浮かべる人もいるだろう。野尻湖は長野県の北部に位置し新潟県との県境にある湖で、近くには黒姫高原や新潟県の妙高高原がある。住所は信濃町になる。登山やスキーをする人は野尻湖を知っているかもしれないが、観光地としては有名ではなく湖でやることといえばバスフィッシングくらいなもので、それほど知られていない場所なのではないだろうか。

そんな場所に旅行に出かけたのは、子供の頃に行ったことがあり、大人になってから懐かしくなり行ってみたくなったからだった。野尻湖には毎年夏に行く機会があったため、いろいろな思い出がある。楽しかった思い出だけではないが、湖に飛び込んで泳いだり、満天の星空を眺めたり、暗闇で肝試しをしたりといったいい思い出もある。そんな多感な頃に過ごした場所にふと行ってみたいと思うようになり、夏休みにエルボスコという湖畔にあるホテル(経営難で閉業してしまったが)に2泊した。

エルボスコに泊まり夕食を食べている時に、信濃町では美味しい食材が採れることを知った。紹介されたのは野菜だったが、東京に戻ってから何気なく調べてみるといろいろと興味深いことを知ることができた。今回は野尻湖旅行がきっかけで知った信濃町の特産品について書いてみたいと思う。

信濃町の特産品には、とうもろこし、トマト、ブルーベリー、ルバーブ、ぼたごしょう、甘茶、そば、米がある。ルバーブやぼたこしょう、甘茶といった馴染みのないものもある。信濃町には元々いい作物が育つ恵まれた環境があり、そこに外国人宣教師が作物が栽培したという歴史が合わさって、現在の信濃町特有の名産品に至っている。

土地の特徴
まず土地の特徴だが、信濃町は山々から湧き出る水が豊富にあり、火山灰土の有機質に富んだ土壌があり、昼夜の寒暖差があるため野菜や蕎麦作りに非常に良い環境である。特に高原では霧がかかることが多く、この霧によって美味しいとうもろこしや蕎麦が育つといわれている。昼夜の寒暖差があると、とうもろこしは糖度が上げるのだそうだ。

霧下蕎麦
また蕎麦も、寒暖差があると美味しくなるとことが知られているが、信濃町は日当たりと水はけの良い土地であるため、いい蕎麦が獲れるようだ。高原では霧に覆われることが多く、そんな中で栽培されることから「霧下そば」と呼ばれ、香り高い美味しい蕎麦として知られている。善光寺に行った時に大善というお店で霧下そばを食べたことがあるが、確かに美味しかった。

凍りそば
信濃町では蕎麦を保存食として大切にしてきた歴史がある。信州でも有数の豪雪地帯であり、冬は凍るような寒さになる信濃町では、江戸時代に「凍りそば」というものが作られていた。地粉100%の手打ちそばを茹でたあと、厳寒期の夜間に戸外で凍らせて自然乾燥させるものだ。この製法は地元信濃町に古くから伝わる伝統製法で、現在でも当時の製法のままで作られているらしい。

食べる時は「凍りそば」に熱々のだし汁をかけて少しすれば、そのまますぐに食べることができるのもので、今のカップラーメンの走りともいえる昔のインスタント食品である。各家で作っておいた凍り蕎麦を大事に保存しておいて、来客があった時などに振舞ったらしい。そば粉100%で作られているため蕎麦本来の風味を十分に楽しめ、お吸い物の種にしたり、油でカラッと揚げて酒のつまみにするのがいいらしい。

凍りそばは、野尻湖の近くの農産加工直売所で買えるようだ(ネットでも注文できるらしい)。
信州黒姫高原ファミリーファームぶんぶく亭
http://bunbukutei.blogspot.com/

特別栽培米
信濃町ではお米の栽培もしている。信濃町は長野県北信地域でも有数の水田単作地帯らしく、主にあきたこまちとコシヒカリが作られている。長野県は山国ゆえの気候のため病害虫の発生が少なく、全国的に見ても農薬の使用基準が少ない地域らしい。それを活かして取り組まれているのが、特別栽培米だ。

特別栽培米とは、化学肥料と農薬を通常の栽培より50%以上減らし、尚かつ堆肥を多く使って栽培しているお米のことをいう。農薬等の使用基準は地域によって違っているから、農薬を沢山使っている地域の特別栽培米と農薬をあまり使わない地域の特別栽培米は、当然使われている農薬や化学肥料の量が違うものとなる。信濃町の特別栽培米はそもそもお米の栽培に使う農薬が少ないから、他の地域の特別栽培米よりも農薬が少なくなる。

酒米
さらに酒米の栽培も近年始まっているらしい。高橋助作酒造店では信濃町で栽培した酒米を使った日本酒を造っている。野尻湖の近く東の方にある荒瀬原(あらせばら)地域で酒米を育てており、地域に根差した日本酒造りをしている。美山錦や山恵錦が栽培されているらしい。

そして野菜ではトマト、ナス、ピーマンも美味しいと評判で道の駅しなのの直売所で売られている。トマトは信濃町のブランド品にまでなっていて、野尻湖畔の菅川地区のトマトの評判がいい。いいトマトが採れるのは、水はけの良さと農薬をあまり使わずにすむ気候によるものらしい。

ぼたごしょう
野菜の中でも信濃町特有のものがぼたごしょうだ。信州の伝統野菜として認定されている唐辛子の一種で、実が肉厚で柔らかく辛味がやや少ないものだ。形状はベル型で四角形のものが一般的で、ピーマンや青唐辛子などと比べても見分けがつく形をしている。普通のトウガラシは比較的温暖な気候を好むが、ぼたごしょうは冷涼な気候を好み、標高の低いところでは味や形が変わってしまい、上手く栽培できないといわれている。標高が低いと、辛さが増して果肉が硬くなってしまうのだとか。

名前の由来は、見た目が丸みを帯びてぼたっとした感じから「ぼたごしょう」という名がついたという説があるが、正式名所は「牡丹胡椒」といい、実の形が牡丹の花の形に似ているというところから来ているという説もある。「ぼたんこしょう」といわれていたものが信濃町では「ぼたごしょう」といわれるようになったのだとされている。

種のついている果実の芯の部分は辛みが強いが、そこを外せば生でも食べられ、甘みがある。加熱することで果肉が更に柔らかくなり、焼いたり、味噌漬、煮物、天ぷらや鉄砲漬等々、様々な料理に利用されている。このぼたごしょうは、信濃町の伝統食「やたら」には欠かせない食材であり、ぼたごしょうときゅうり、ナス、みょうが等を細かく刻んでふりかけのようにして食べられているい。寒冷で貧しい生活のなかからビタミン補給のために考えられた食べ物だとされ、ぼたごしょうとかつお節や味噌を合わせて食べる「こしょうみそ」というものもあるのだとか。

甘茶
お茶にも信濃町の名産品がある。甘茶だ。甘茶とは、お釈迦様の誕生日(4月8日)を祝う花祭りの時に飲まれるお茶としても知られているもので、信濃町は全国でも有数の甘茶の産地となっている。江戸時代に旅のお坊さんがお寺の境内に植えたのが始まりとされており、畑の境界や、畦が崩れるのを防ぐために植えられてきた歴史がある。名前の通り強い甘味があるため、戦時中の甘味料不足の時は大変重宝されたらしい。

甘茶は飲料や甘味料として使われてきた歴史がある一方で、虫除けとしても使われてきた。甘茶を墨に混ぜて白紙に書き、柱や虫の出入りする場所に貼ったり、船乗りが甘茶で煮出した液を積み荷の周りに塗ると、虫が寄らないとされ虫除けに欠かせないものでもあったらしい。天然の防腐剤や甘味料として、醤油にも使われることもあるらしい。黒姫物産センターでは、うどんに甘茶を練りこんだ「甘茶うどん」という珍しいものを提供しているようなので、興味のある人は寄った際に食べてみるのもいいのかもしれない。

ブルーベリー
果物ではブルーベリーが特産品として知られている。信濃町には全国で初めてブルーベリーを本格的に栽培し、産地化したという歴史がある。ブルーベリーには比較的冷涼な気候を好むハイブッシュ・ブルーベリーと、暖地に対応するラビットアイ・ブルーベリーがあるが、信濃町は前者のハイブッシュ・ブルーベリーの一大産地である。1951年に当時の農林水産省北海道農業試験場に米国からハイブッシュ・ブルーベリーが導入されたのが、きっかけなのだそうだ。

ブルーベリーの栽培は東京の小平市で初めて栽培が始まったといわれているが、小平市の方は温暖な気候で栽培されるラビットアイ系統のものらしい。ラビットアイ・ブルーベリーが1962年に農林水産省によって導入され小平市で栽培され、知名度が上がっていく一方で、1971年にハイブッシュ・ブルーベリーが長野県で導入されたということらしい。

今では長野の全県でブルーベリーの栽培が行われていて、信濃町はその一大産地となっている。ブルーベリーは、鮮度を保つのが非常に難しくスーパーなどで販売されているものは全て早取りのものとなる。実が赤い時に収穫し酸味が強く甘みが少ないのが一般的だが、完熟のブルーベリーは酸味が弱く甘みが強く、道の駅やブルーベリー狩りで食べる現地の熟したブルーベリーは格別の味らしい。

カナダ人宣教師アルフレッド・ストーン
長々と信濃町の特産品の数々を書いてきたが、信濃町の農作物を語るうえで外せないものがある。それは、アルフレッド・ストーンというカナダ人宣教師の存在だ。今や信濃町の名産品になったとうもろこしやルバーブは、アルフレッド・ストーンが昭和初期に農家を栽培指導したことで始まったといわれている。カナダから持ち込んだルバーブやトウモロコシの品種などを、信濃町で栽培したらしいのだ。

宣教師が信濃町に来た理由だが、野尻湖は避暑地として外国人から知られていた。ウィキペディアの避暑地の項目に、野尻湖は日本三大外国人避暑地とされ「山の軽井沢、湖の野尻湖、海の高山」と称されたと書かれている。避暑地といえば、軽井沢が良く知られている。明治の頃に1人のカナダ人宣教師が冷涼な気候がカナダに似ていることから軽井沢に1軒の別荘を立てたことで、軽井沢の避暑地としての歴史が始まったのだが、その後みるみるうちに別荘が100件以上になり人が増えていった。

その後も軽井沢は人が増え続け、自然を切り開き外国人が文化を形成していく訳だが、そんな軽井沢を窮屈に感じた別の宣教師が野尻湖を避暑地として開拓したという歴史が、野尻湖にはある。軽井沢と同じにならないようにと、自然を残しながら開拓されたのが野尻湖なのだという話を、昔聞いたことがある。野尻湖に外国人が来るようになったのはそういった経緯があるのだが、アルフレッド・ストーンによって、とうもろこしやルバーブは信濃町の栽培の礎になった。

ルバーブ
ルバーブとはフキに似たタデ科の野菜をいい、緑のものと赤いものがあり、茎の部分が食用とされる。熱を加えるとドロドロと溶けてしまうため料理には使えず、ジャムやジュースに加工される。そのままだと酸味が強い。肉食中心の欧米人にとってルバーブは、繊維質が豊富でビタミンCやカリウム、カルシウムが多く含まれていることから、食卓の必需品とされていたらしい。宣教師が信濃町の一部の農家に依頼して作ってもらったのが、ルバーブの産地となる初まりだったようだ。

ルバーブの栽培は難しいものではなく、年2回の堆肥と肥料を与える程度で育ち、虫もつかないため農薬も使わずに済むのだそうだ。酸味が強いため、鳥や小動物も茎をかじることがないらしい。メディアでルバーブは美容と健康にいいと取り上げられてから、徐々に知名度が上がり、今では信濃町の特産品として知られるようになっている。

とうもろこし
そして最後にとうもろこしの説明をしておこうと思う。信濃町の特産品の中でも特に知られいるのは、やはりとうもろこしとなる。美味しいとうもろこしが獲れる栽培環境については既に書いたが、信濃町では「もろこし街道」が有名だ。

7月下旬~8月下旬になると、黒姫から戸隠へ通じる県道36号線沿いのあちこちに、農家の直売店が並び、獲れたてのとうもろこしが売れらる。県外からも多くの観光客が来る人気のスポットで、週末になると直売店の前には行列ができたりと、かなりの賑わいを見せるようだ。一種の夏の風物詩と言っても過言ではないだろう。

余談だが、とうもろこしには様々な品種があるのだが、中でも思わず目を引いてしまうものに、黒姫もちもろこしというものがある。身が黒く光沢のあるとうもろこしで、見た目に合わずもちもろとした食感なのだそうだ。採れたてをすぐに食べないと甘みが無くなってしまうため、地元にしか出回らないものである。食べる機会がないだけに、現地に行って食べてみたい一品である。

信濃町の特産品を調べたらいろいろなことを知ることができた。以下のサイトを参考にしたが写真が載っていて分かりやすかった。興味を持った方は見ていただければと思う。

参考にしたサイト
とうもろこし
https://www.town.shinano.lg.jp/docs/764.html
信濃町役場、信濃の特産物、2020年6月24日
http://www.shinano-machi.com/news/2272
信州しなの町観光協会 一茶の里、絶品!旬の信濃町産とうもろこし【2018 ガイド】、2020年6月24日

そば
https://www.town.shinano.lg.jp/docs/764.html
信濃町役場、信濃の特産物、2020年6月24日
霧下そば
https://www.iijan.or.jp/oishii/products/rice/post-978.php
JA長野県、母たちが守る信濃の国の凍りそばの伝統製法、2020年6月24日
凍りそば
http://bunbukutei.blogspot.com/2010/07/blog-post_20.html
ぶんぶく亭、凍りそば、2020年6月24日


https://www.town.shinano.lg.jp/docs/764.html
信濃町役場、信濃の特産物、2020年6月24日
酒米
http://www.matsuwo.co.jp/Sake/Matsuwo_make/pg473.html
高橋助作酒造店、日本酒のテロワール、2020年6月24日

ルバーブ
https://www.town.shinano.lg.jp/docs/764.html
信濃町役場、信濃の特産物、2020年6月24日
https://www.iijan.or.jp/oishii/products/vegetable/post-1072.php
JA長野県、ルバーブのことをもっと知りたく思いました、2020年6月24日

ぼたごしょう
信濃町役場
https://www.town.shinano.lg.jp/docs/764.html
信濃町役場、信濃の特産物、2020年6月24日
https://www.town.shinano.lg.jp/docs/2562283.html
信濃町役場、信州の伝統野菜「ぼたごしょう」について、2020年6月24日
https://www.town.shinano.lg.jp/docs/2568385.html
信濃町役場、伝統野菜「ぼたごしょう」料理、2020年6月24日

甘茶
https://www.town.shinano.lg.jp/docs/764.html
信濃町役場、信濃の特産物、2020年6月24日
https://blog.nagano-ken.jp/people/interview19/149.html
長野県魅力発信ブログ、「火」と「水」にこだわった健康茶 地域の多くの人に健康で元気になって欲しい、2020年6月24日

ブルーベリー
https://www.town.shinano.lg.jp/docs/764.html
信濃町役場、信濃の特産物、2020年6月24日
https://www.iijan.or.jp/oishii/products/fruit/post-1372.php
JA長野県、かくも贅沢で幸せなブルーベリーの食し方!、2020年6月24日

菅川地区のトマト
https://shinano-town.info/person/si001
信濃町振興局 しなのまちどんなまち?、地元の通も思わずうなる、信濃町のツボはココ!!、2020年6月24日
https://shinano-town.info/person/
信濃町振興局 しなのまちどんなまち?、一度たべたらやみつき! おいしい野菜のひみつ。、2020年6月24日

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