こんな本
宮大工の棟梁、小川三夫氏が奈良の古寺の見どころを分かりやすく解説した本。1,300年前、ろくな道具もない中で寺院をどのように工夫し苦労して造ったのか、造り手からの解説を聞ける一冊。
著者は前回紹介した『木に学べ』の話し手、西岡常一の弟子だった人物。
これを知れる
解説されている寺院は、斑鳩の法隆寺・法輪寺・法起寺、西ノ京周辺の薬師寺・唐招提寺、奈良公園周辺の東大寺・興福寺・元興寺・十輪院、そして室生寺・秋篠寺・長弓寺。
奈良の有名な寺院をこの一冊で全て知ることができると言っていい。
章の始めにそれぞれの寺院の創建の歴史が簡潔にまとめられているのがいいし、法隆寺と薬師寺では住職との対談が書かれていて、こちらもいい。
『木に学べ』に書かれていることをさらに詳しく解説しており、『木に学べ』とセットで読むのがおすすめ。
ここがいい
例えば、檜は伐ってから200年ぐらいは強さが増すこと、法隆寺は今でも65%ぐらいが創建当時の飛鳥時代の木が使われていること、法隆寺の基壇は何層にも土を搗き固めていること、木の癖を見て建てるとはどういうことかといったことが書かれている。
また個々の寺に限定した話だけでなく、古代の寺院建築全般に関わることも書かれていてる。
例えば、寺院の堂塔を造る時は重要な金堂にいい木材を使うため、五重塔や三重塔は材が悪くなり、それを補うために技術が発達した。
時代が経つにつれ、いい木材を確保できなくなるため材が減り小さくなり、そのために見映えを良くし美しさを出そうとした。
と、そうしたことを知れる。
垂木や虹梁などの機能や見どころも解説されているため、建築をしっかり知りたい人にもいい。
奈良の古寺の堂塔が、道具の少なかった飛鳥・奈良時代の大工の創意工夫によって形作られてことを知ると、よりその建物の凄みを感じる。是非とも本を片手に名寺に足を運び、寺院建築を楽しんでもらいたいと思う一冊。
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