2022年の3月に京都の宇治にある萬福寺に参拝した。
平等院のあるJR宇治駅の隣にある、黄檗駅から歩いて行ける寺院だ。
萬福寺は黄檗宗の大本山で江戸時代に創建された寺院だ。
黄檗宗とは明から伝わった禅宗の一派で、念仏と禅を結び合わせた念仏禅を特徴とする宗派である。
中国の明時代の仏教儀式が現在も受け継がれ、読経は明朝時代の発音を継承し、禅宗の臨済宗や曹洞宗と比べて中国的な特徴を色濃く残していることが特徴とされてる。
この寺院の面白いところが、境内の建物に明朝様式が見られ、昔の中国の寺院を感じさせるところだ。
総門の中国式の牌楼の屋根には摩伽羅(まから)というワニの神様が置かれており、
伽藍全体が左右対称に配置され、そのすべてが中国風の回廊で結ばれている。
柱にはチーク材という、鉄よりも固い木材が使われているが、寛文元年(1661年)に創建されて以来、これまで焼失を免れてきたため、明朝様式の禅寺が残る貴重な建物として世界的にも有名だ。
木造の明朝様式の建物が現在残っているのは世界を見渡してもここ萬福寺だけのようで、世界でも類のない建物だというから、実は非常に貴重な寺院なのだ。
そんなことを知っていたらもっとゆっくり参拝したが、旅の時は知らず、写真も動画もあまり撮らなかった。
(建物の特徴はブログやYouTubeで紹介しているので、そちらをご参照されたい)
そんな見どころのある萬福寺だが、個人的に興味を持ったのが、この寺院が創建されたおかげで明から日本にいろいろな文化が入り、広まったことだ。
インゲン豆が隠元禅師によって広まったからそう名付けられていることはよく知られているが、その隠元禅師が開いた寺院がこの萬福寺である。
インゲン豆の他にも西瓜(すいか)や蓮根(れんこん)、孟宗竹(たけのこ)も隠元の来日により日本に普及したと言われている。
また木魚や明朝体の書体、400字詰の原稿用紙の規格も、隠元ならびに黄檗宗により日本にもたらされたと伝えられており、食材以外に美術、医術、建築、音楽、史学、文学、印刷、煎茶、普茶料理と、黄檗宗の文化は広範囲にわたり日本に影響を及ぼした。
※普茶料理:黄檗宗の精進料理。テーブルの上の大皿に盛られた料理を、椅子に座って4人で取り合って食べるもので、テーブルもこれにより広まったという。
萬福寺は平等院鳳凰堂に比べると参拝者は少なく、境内は静かで少し寂しくもあるが、そうした文化がこの地から広まったと思うと、参拝しがいのある寺院だ。
旅の疲れを忘れさせてくれる寺院だった。
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